違ない。岩のような巨体に、覆面をおろして、火焔の中に身動きもせず立っている。生き不動のように。
 別館に居るべき筈のない駒守である。すると、駒守に似ているが、あれこそ風守なのであろうか。血をひく孫であり、同じ覆面であるから似ているのは当然かも知れない。誰にも姿を見せたことのない風守だから、人々は判断に迷った。
「大殿さま。早く、早く、逃げて」
 人々は狂ったように叫んでいる風守の侍女政乃の声に気がついた。風守をよく知る政乃が大殿さま、と呼びかけているのだ。まさしくそれは別館にすむ孫ではなくて、当主駒守に相違なかった、どうして彼が別館の中にいるのだろう。彼はなぜ逃げようとしないのだろう。
 火事がさらに一時にひらめいてすべてをつつんだ。身動きもせず立ったまま、駒守の姿は火焔の中に没したのである。
 別館を焼きつくして、火は消えた。消防がおくれて、完全燃焼の自然鎮火にちかかったから、焼死した人の姿は白骨の細さにちかい黒コゲとなって発見された。まさしく二ツの屍体が現れたのである。一ツは生き不動の駒守が立っていた位置に。一ツは風守の座敷牢の位置に。当然各々の在るべきところに在ったのである。
 
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