るでしょう。お兄さまッて、時々あんな妙な風になる人よ。変に凝り性のところがあるらしいわ」
 英信は、身動きせず、頬杖をついていた。二人の娘たちも文彦も、薄気味わるくなった。彼女らがソッと立上りかけた時であった。誰かのけたたましい叫びが起ったのである。大勢ののしり騒ぐ声に変った。それは離れていて、シカとききとれなかったが、やがて一人の声が叫びつつ近づいてきで、火事だ、火事だ、と叫んでいるのが分った。それから後は夢中であった。
 彼女らは庭へでていた。走っていた。別館の前でボンヤリしていた。別館が燃えているのだ。
 別館の中から、けたたましい叫びが起った。助けてくれ、と叫んだようだ。しかし、動物が吠えるような一声が、つづいて、きこえてきただけであった。再び呼び声は起らなかった。それが風守の最期であったのだろう。人々は徒らに走り騒ぐばかりで、火を消す手段を知らなかった。にわかに火が走って、別館の全部にまわった。一時に真昼のように明るくなり、焔にまかれた別館が全部の姿を現わした。そのとき人々は燃えつつある火焔の中に意外な人の姿を見た。
 それは、まさしく八十三歳の多久家の当主、駒守であったに相
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