けをくりかえす。声が高まる。一同は自然に鬼気を感じてきた。もはや、笑いごとではない。呼びかけは高潮し、木々彦の髪の毛が逆立ち騒ぐかと思われるほど妖しく狂おしく波うち高まる。フシギや、テーブルが動きはじめた。コトコトとうごく。うごいて、とまる。にわかにはげしく揺れはじめる。静かになる。走るように、うごきはじめる。次第に小さくなり、やがて静止してしまう。また、コトコトとうごきはじめる。コクリサマを呼ぶ木々彦の声は、病的になり、やがて苦悶をあらわして、まるで鳴咽するように息苦しく、せつなくなった。全身に苦痛がみちあふれて、身をねじくっているようだ。その痛ましさ物凄さに一同は身の毛がよだち、銘々が鋭い痛みを感じるようにさえ思われたのである。木々彦の断末魔のような一声につれてテーブルがガタリと揺れてやみ終ったとき、
「ア、ア」
という叫びをもらして、木々彦はバッタリ卓上に伏していた。彼の上体はケイレンしていた。まるで彼の魂が、彼の身体から静かに離れつつあるようであった。長いケイレンが終ってから、彼は静かに上体を起した。酔ってユデタコのようだった彼は、今は全く蒼ざめていた。彼はホッと息をついて、
前へ
次へ
全56ページ中31ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング