しくハシャぎ語りつづける妹の様をジッと見ていたお園は、その言葉に胸を刃物で突かれたほど鋭い痛みを覚えた。自分も母もこの境遇には興味がないのだ。それを駒子は知らないのだ。そして母が父の本妻となり、自分が実子となったとき、義理の父のメカケたる自分の運命はどうなるのかと、小さい胸はただそれだけで一パイなのだ。妹が妖しくハシャイで語りつづけるワケは、ただそれだけなのである。
可哀そうな子供よ。心配するんじゃないよ。この境遇を幸福と見て酔っているのはお前だけだ。私たちはお前の幸福を祈っても、それを乱しはしない。
しかしお園の心にはムラムラと黒雲がわきたったのだ。この境遇が幸福でないとは、私はなんというウソつきだろう。駒子に代って、この家の相続者、全部の富をつぐ者は自分だけだ。それを、オメオメ妹にまかせて満足などとはウソのウソというものだ。彼女はいささか目のくらむ心持をおさえ、ホッとひと息、
「とにかくお米お源という人をこの屋敷から出さなければ、あんたも幸福にはなれないのだし、その二人を追んだすには、お母さんがここの本妻で私が実子にならなければ解決ができないのだものねえ。本当に、どうしたら三人
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