ち上った。塩壺を持って井戸端へ行き流しへ塩をあけて水で洗い流した。彼女は再び台所へ戻り、塩のつまった大きなカメから、二ツカミの塩を壺の中へ入れた。
ちょうど、それをやりとげた時だった。二階からギンとソノが駈け降りて、入間玄斎をよびに駈け去ろうとしたのである。
階下では宇礼が、階上では志呂足、須曾麻呂、比良の三名が、それぞれ捕えられていたのである。
新十郎は苦笑しながら警官たちに説明した。
「宇礼がミコで、暗示にかかり易い娘と見こんで、やったまでのことですが、ほかに証拠が一ツもないので、破れかぶれ窮余の策というわけでした。うまくいったらオナグサミというところでしたね」
彼も大いに辛らかったらしい。
「この事件を説くカギは、甚八をよびよせたのはなんのためか、というところに気がつけばよかったのです。はじめから甚八は千代に殺された如くに毒殺される役割でした。甚八の毒死によって、二十年前の津右衛門の死が毒死としてよみがえる公算もあります。それも千代には不利な事となったでしょう。偶然にも、甚八と千代は石の下を見破った地上に二人だけの人物でした。このために益々千代は苦境にたち、自分の無罪を大
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