これも同罪なりと「首を斬られ」てしまったのだ。時に慶長十八年七月二十日のことであった。
 その歿年と系図に記入の文章を見れば、初代津右衛門の長女さだが長安の妾の一人であったことは明かであろう。
 以上が今日の史料から判読しうる事実であるが、さだは長安の生前多くの財宝をうけとってそれを生家に秘蔵していたと見るべきであろうか。幸いにその財宝は長安の死後も発見されずに、そのまま千頭家の私財となり、ここに千頭家開運の元をひらいた。当家大明神大女神とあるのは、それを指すのであろう。
 甚八はそんなことまでは知り得なかったが、佐渡金山奉行に関係ある財宝が石の下に隠されているものと睨んだ。
 明日は法事の当日。これで千頭家の逗留は終りだが、その方が清々と後クサレなしというものだ。明後日から川越あたりに宿をとって、精根つくして秘密の石を見届けてやろう。東京から二三人若い者をよびよせて、万事手ぬかりなくやるから成功疑いなしだと甚八は満々たる自信であった。
 ところが、甚八がさて寝につこうとする時、現れたのは須曾麻呂であった。
「いよいよ法事の当日になりましたが、津右衛門どのの霊にでてもらいますから、身支
前へ 次へ
全67ページ中49ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング