忘れて、いかにして彼らの先に秘密を見破るべきかと思い迷った。
★
甚八は部屋へ戻るど、天鬼からもらった紙キレをひろげて考えこんだ。
「人左川度。キウンヨザギンブ。クレビラキ。当家大明神大女神也」
しばらく見ているうちに、顔色が明るく変った。彼はヒザを叩いて起き上った。
「フン。そうか。するてえと、やっぱり金箱だ。それも、よほど莫大な金箱に相違ない。佐渡金山奉行か。首斬られ、というのが分らねえや。当家大明神、大女神てえのも、分らねえが、佐渡金山奉行とあるからには、金箱だけはマチガイがねえや」
歴史を知らない甚八には全部のことは分らなかったが、的は外れていなかった。
歴史の心得があったにしても、この謎の文字からだけでは正確な結論は得られない。系図に書き加えられた文章全部、つまりこの謎の文字に先立って、
「千頭家は当地移住まで特に記すべき血統なし。初代津右衛門長女さだ」
これがないと分らないが、これだけでも正確なことは分らないのである。系図の初代津右衛門長女さだ、その下に記入の歿年、慶長十八年七月二十日、という日附があって、はじめて全てが解明する。
日本歴
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