掻き廻されているのです。そして、今村氏を八十吉氏と思いこんでいたのは、清松君一人であります」
 逃げようとする清松は、いつのまにやら後に忍び寄った花廼屋が苦もなく捕えた。田舎通人、いつもながら、この時だけはカンがよい。新十郎は清松を静かに見つめて、
「お前は一同が真珠を分配する時に、腕が痺れているからとトクを代理に出したそうだが、潜水病は偽りで、予定のカラクリではなかったかね」
 観念した清松は悪びれず答えた。
「真珠を手にとって見ているうちに、たしかに潜水病のキザシも起ったのです。しかし何となく切ない気持、淋しい気持で、たまらなくなってゴロリと倒れてんまったのでしたろう。フカシてもらっているうちに、潜水病は二日ぐらいで治りましたが、まだ治らぬ、手と膝が痺れていると偽って、畑中を殺す機会を狙っていたのです。まるで妖しい夢を見ているような気持でした」
 それが清松の告白だった。おキンが新十郎に感謝の言葉をのべて、
「あの強情の今村さんが洗いざらい良くも白状したものですね」
 と、きくと、新十郎はいささかてれて、
「ナニ、さッきの逆をやったんです。つまり清松の告白書をこしらえて、否応なく問
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