ようである。彼は浅虫家の小作人の子供であるが、その家の者は顔をしかめて、
「あの野郎は三人兄弟の末ッ子ですが、なんしろ雪国の野郎は大酒のみで、なまじ小金を貰ったのが却っていけなかったようですよ。三年前までは盆になると戻ってきて景気の良さそうなことをいっていましたが、店を潰してからは手紙一本よこしません。恥サラシをやらなきゃよいがと心配しているのです」
「年はいくつだね」
「今年は四十になりやがった筈です。女房子供五人家族ですから、妻子が哀れですよ。女房はこの村からでた女ですが、わりとシッカリ者で、なんでも貧民窟のようなところで内職して子供だけは育てているそうですが、こまったものです」
「すると離縁したのかね」
「いゝえ。時々金をせびりに行きやがるそうで、十銭二十銭の血と汗の銭をせびって消えて行きやがるそうです」
女房の実家できいてみても同じ程度のことしか分らなかった。
植木屋の行方の方は、さらに雲をつかむようなものである。彼の生れは秋田であった。三人はそういう遠路まで出向いたのである。彼の故郷の家人は頭をかいて、
「どうも、あの野郎の行方は全くわかりません。元はここの殿様のお屋敷の
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