まわり一度御高説を拝聴したいと思っておりましたが、お目通りの機を得ませんで甚だ不本意の思いを致しておりました。本日参上いたしましたのは余の儀ではございませんが、我々未熟者に御教育の厚志をもって、まげてヤミヨセの儀を拝見させていただけますまいか。と申しますのは、すでに当教会の信徒四名があたかも狼にノド笛をかみ殺されたかのような変死を致しておりますからで、ヤミヨセは霊力によって信徒が狼に食い殺される様を演ずると承りましたが、何者か悪者がいてヤミヨセの儀を悪用し、これに似せて人を殺している節があるからでございます。信徒ならぬ我々がまことにムリムタイなお願いとは重々心得ておりますが、これも国法を守る者の切ない義務。兇悪犯人をあげるために必死の努力をなす者の苦心をあわれんで、まげてお聞き届けを願いあげます」
新十郎が赤誠をあらわしてこう頼みこむと、世良田はジッと考えていたが、
「なるほど。お前の職務にそれが必要とあれば、これも国のため、まげて別天王様にお願いしてあげてもよい。幸いヤミヨセは別天王様がその場に出御あそばすわけではなく、代り身として私一人が座に出ておればよろしいのだから、それ以上に
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