也に出頭をもとめ、当夜の事情を問いただしたが、彼は自分がヤミヨセにまぎれこんだことは認めたが、婦人については堅く否認してゆずらない。
「私はかねてカケコミ教に大きな憎しみをもっておりましたが、かほど信者の心を奪い去る邪教の詐術《さじゅつ》というものを一見したいと思い、元々かの本殿は勝手知ったるわが家ですから、ふと忍びこんでみたのです。同伴者がおったなどとは、とんだ迷惑、自分一人に毛頭相違ありません」
あくまで否認をつづけるから、取調べをうちきって帰宅させた。
そのとき土屋警部がためらいがちに、
「私は今朝皆さんのお見えになるまで月田邸の警備に当り、ズッとつききっていたのですが、月田全作の弟妹は分家したり嫁いだりした中に、たった一人、末娘のミヤ子という二十の娘がまだ未婚で、兄の家に同居いたしております。この娘をちょッと見かけましたが、いかにも体格のよい、ちょッと角ばった知的な顔をしているようです。まさかとは思いますが、御参考までに、申上げておきます」
「イエ、それは大そう興味津々たる事柄ではありませんか。さッそく牧田さんに首実検をおねがい致すことにしましょう」
そこで牧田は二日間も
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