効を奏した。花柳地では、姐さん連に可愛がられるし、お邸の奥様方にも、気がおけなくッて、おもしろくッて、この方がよいという評判である。
そこで藤兵衛の店では、番頭の修作が二十三、大そう若い年だが、これが唯一人の大人である。もっとも、藤兵衛の甥の芳男という修作と同じ年のが、藤兵衛の代理格で、働いている。
以上の二人をのぞくと、あとは十八の金次、十七の正平、十五の彦太郎、十三の千吉、十二の文三、みんな子供だ。金次と正平はすでに顧客まわりのベテランで、ちかごろは彦太郎もやりだした。千吉と文三はまだ見習いである。いずれも藤兵衛の好みにかなう要素をそなえた美少年であるが、金次ぐらいになると、そろそろ遊びも覚えてくる。商店の小僧は早熟であるから、藤兵衛の流儀で行くと、金次はそろそろ顧客まわりに不適になっているのである。
これが藤兵衛新案の人形町川木の性格であった。
藤兵衛には子供が一人しかない。アヤという十八になる一人娘であるが、胸の病があるので、向島の寮に女中を二人つけて養生にやっている。アヤの実母は三年前に死んで、柳橋で芸者をしていた妾のお槙をひきいれて、土蔵につづく離れの一室に住ませて
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