輪をくぐるのがアイツだよ。するてえと、あれも主役だ。虎が人間の素顔で町をねるてえ趣向が新奇だねえ」
 人形町へ到着すると、すでに警察の一行は留置した芳男をひったてて川木へあつまり、新十郎を待っている。加助の顔も見える。
 藤兵衛の死体は白木の棺におさまって安置されている。アヤは病身をおして父の死顔に一目挨拶にと来たものの、ムリがたたったところへ、父の非業の姿を見て、ウーンと気を失ってしまった。そのまま高熱をだして、一室にねこんでいる。新十郎は木戸を下させて、関係者一同を集めた。高手小手にいましめられている芳男の縄をとかせて、
「一晩つらかったろう。お前が永年世話をうけた叔父藤兵衛によく仕えて、かりそめにもお槙と事を起すようなことがなければ、こんな事件は起りはしなかったのだ。それを思えば、警察署の一夜などは罪ほろぼしのタシにもならないのだよ」
 こうきつくたしなめて、
「さて、お前にきくが、藤兵衛の死体のかたえから拾ったタバコ入れはどうした?」
「大川へすててしまいました」
「お前はいつもタバコ入れを腰にさしているのかえ」
「いつもということはありません。店に働いている時などは腰にさして
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