乗馬で走らないことに相場がきまっていたが、お梨江は常識の友だちではない。乗馬が面白そうだから、我慢ができなくて、こんな面白いものはないと大よろこびで、道行く人に睨みつけられても平チャラなのである。良識ある新十郎は馬をもちこまれてこまったが、お梨江の言葉であってみると、どういうわけだか、彼はイヤと云えないのである。
一同勢揃いしてイザ出発となるとむくれたのは虎之介。馬にのれない訳ではないが、自分だけ着物の着流しだからグアイが悪い。けれども胸に畳みこんだ大推理があるから、ここは我慢のしどころと一時をしのんでいる。
大そう生気のない老巡査を先頭に立てて、異様な五騎が通るから、驚いたのは町の人々。
「オイ、見ろよ。妙なのが通るぜ。曲馬団の町廻りかなア。茶リネの向うを張って、日本曲馬をやろうてえんだなア。鼻ヒゲをひねっているのが勧進元だね。太夫《たゆう》と女芸人は水際立っているねえ。こいつァ茶リネもかなわねえや。あの大男は何だろう? あれも日本の生れかねえ? ダラシがねえなア。ハハア。わかりましたよ。こいつァ趣向だねえ。日本の内地じゃア猛獣が間に合わねえや。あいつが虎の皮をかぶるんだよ。火の
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