士探偵出馬の記事を読んだから、私も探偵の心眼を働かして犯人を捕まえてあげましょうというので、馬にまたがって早朝から乗りこんでいる。新十郎の書斎へ詰かけて、
「あなた、お馬にお乗りにならないの」
「乗りますけれども、馬を持っておりません」
「じゃア、人形町のような遠いところへ、どんなもので、いらッしゃるの?」
「歩いて参ります」
「アラ、大変。私、お馬を持ってきてあげるわ」
「ところが、連れがありますので、ぼくだけというわけに参りません」
「存じております。気どり屋の通人さんに、礼儀知らずの剣術使いでしょう」
「ほかに古田さんという巡査がおります」
「じゃア、四頭ね」
 と云ったと思うと、馬にのって駈け去る。やがて馬丁と四頭の馬をひきしたがえて、戻ってきて、庭木へ一頭ずつつないでしまった。
 当時は、大そう乗馬がはやっていた。婦人間にも流行して、袴をつけて、馬にのって雑沓の町を走りまわる。上流の流行ではなくて、一般庶民の半可通の流行で、女はたいがい淫売婦に限られていた。それで乗馬の流行は、甚しく識者に軽蔑され、匹夫《ひっぷ》野人、下素《げす》下郎、淫売どものやることで、良識ある人士は街を
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