とんでもない!」
 芳男ははじかれたように否定して、蒼ざめ果ててガタガタふるえたが、やがて冷静をとりもどしたらしい。
「そうとられても仕方がありませんが、私はもう胸がいっぱいで、無我夢中になって何も分りませんでした。勘当をゆるして下さいとたのむには、お槙と一しょではグアイがわるうございます。女はそうなると意地がわるうございますから、勘当が許されないように、差出口をするに相違ありません。そこで、お槙のねているうちに勘当をゆるしてもらって、お槙がオンでてしまうまで素知らぬフリをして身を隠していようなどと、そんなことが気がかりでしたから、ただもう一刻も早く叔父にあやまりたい一心で夢中だったのでございます。カケガネを爪楊枝で外したのはたしかに非常識ですが、そんなことには気がつかなかったぐらい夢心地で早く叔父にあやまりたい一心でした。決して私が下手人ではありません。私の申上げたことは、そっくり掛け値なしの真実でございます」
「それでは、もう一つきくが、お前は加助が藤兵衛によびよせられたことを知っているかえ」
「それは存じております。叔父が私どもに、私とお槙とにでございますが、こう申しきかせました
前へ 次へ
全51ページ中35ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング