た細い路地で、表通りは縁日の雑沓でも、この路地の夜だけはまッくらヤミで人通りもないだろう。ちょうど都合よく塀の外にゴミ箱がある。そこへ上ると塀をなんなく越すことができそうだ。
 しかし女中をよんで、
「戸締りは、何時にかけたかえ」
 ときいてみると、
「水天宮の縁日の晩は夜ッぴて外がにぎわっていますし、店の人も夜遊びをゆるされておそくまで遊んでいますので、夜通し裏口には錠を下しません」
 という返事。これでは益々何者が忍びこむことも容易である。
 捜査を終って、いったん引きあげようというところへ、大そう景気のよい叫び声。
「犯人をひッとらえて来ました」
 刑事巡査がどやどやとなだれこんだ。彼らは、芳男を高手小手にいましめて、自分らのまんなかにはさんで、引ったててきた。
 芳男は品川駅で汽車を待っているところを捕えられたのだという。
「どうして犯人と分りましたか」
 こう新十郎が刑事にきくと、
「捕えて引ッたててきたばかりでまだ取調べは致しておりませんが、ごらんなさい。この男の着物の膝のところに血がついております。ほれ、タビの裏も、ごらんの通り、血がついていますよ。すぐ泥をはくにきまって
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