、土蔵の中へあばれこんだというわけが、これで分ったようである。
 しかし、新十郎は、お槙の訊問を後まわしにして、
「古田さん。番頭の修作をつれてきて下さいませんか。それから、ヒマをもらった加助という前の番頭を、ここへ呼んでおいて下さい」
 と鹿蔵にたのんだ。まず外部をかためて、最後に中心をつこうという訊問の正攻法であろう。

          ★

 利発で愛想のよい美童に限って使用するという川木の流儀の通り、修作は、見るからにアカぬけた好男子、ニコニコといかにも人をそらさない明るい愛嬌がある。
 新十郎は彼をむかえ入れて、
「おまえが旦那を見かけなすった最後の時はいつごろだえ」
「私は昨晩は八時にヒマをもらいまして、遊びにでておりまして、旦那にはお会いしておりません。御承知でもございましょうが、昨日は五日、水天宮さまの縁日でございます。この日は夜ッぴてこの通りも混雑いたしますから、一日、五日、十五日の縁日に限って、当家は夜の十二時まで店をひらいております。ですが、店員全部居揃う必要もありませんので、五日の縁日には、私と正どんと文どんが夜の八時から休みをもらうことになっております。そ
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