はその時を待つために、加納さんについてまわっていたのです。毒がまわって倒れかけたとき、とびついて、介抱するとみせて、小柄を腹へ刺しこむために。小柄は虚無僧の尺八の中に隠してありました」
アッという叫びが起った。人々は総立ちになったが、花廼屋と鹿蔵が、やけに田所にくみついて、ひッ捕えたところであった。田舎通人、神仏混合、花廼屋因果と身はやつしても、もとは鉄砲組の小隊長、鳥羽伏見から上野寛永寺まで場数をふんだ覚えの腕は相当なもの。田所をひッ捕えて、まるで自分が推理して捕えたように大満足、ニタリニタリよろこんでいる。田所は後手にとられ、すでに観念して目をとじていた。新十郎は人々のざわめきの鎮まるのを待っていたが、
「悧巧な犯人でしたよ。犯人は当夜重立った人々の扮装をあらまし知っていました。むろん神田正彦さんが、虚無僧になるということも、あるいは神田さんが虚無僧姿に仮装するようそれとなくすすめたのは犯人であったかも知れません。尺八に小柄を隠して、加納さんが毒に苦しみはじめるまで、ついてまわるのは既定の計画でありましたから。そして二人の虚無僧がいることによって、常に一人が加納さんをつけているの
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