を、まぎらすことが必要でした。そして田所を虚無僧に変装させて、自分は梅干に毒を仕込み、加納さんを偽って夕月へおびきだしたのです」
 人々はギョッとして目を見合せた。花廼屋は訝しんで、
「すると、ほかに真犯人がいるのですか」
「小柄を刺したのが致命傷でないそうですから、毒を仕込んだ人の方が、もっと大物の真犯人というべきでしょうか。では、真犯人のお部屋を訪問いたしましょうか。しかし……」
 新十郎はとッくにアツ子が立ち去ったのを知っていた。そして、それから何が起ったかということも、おぼろに見当がつけられるような気がする。あの気性の女は……細川ガラシャと妲妃《だつき》のお百を一しょにしたようなものだ。見破る者がなければ、満太郎も殺されて、不義の子良介が家督をつぐことになったであろう。居室には鍵がかかっていた。扉を破って人々がはいってみると、アツ子は一子良介を刺し、自分も懐剣でノドをついてこときれていた。立派な最期であった。

          ★

 海舟はナイフで悪血をとりながら、虎之介の報告をきき終った。
「フン。そうかい。その場に行ってみなくッちゃア、毒死というのは分らねえやな。あれ
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