のはその象徴だと見立てることもできるではないか。彼は次第に思いこむようになったけれども、さすがにそれだけは云わなかった。
三人の子供の墓標をひッこぬいて焼きすてたとき、彼は最後の事業を決意していたのである。その翌日から、かつてシイタケで失敗した山地の木立を手当り次第叩き切りはじめた。
誰も彼の意図を察することができなかった。できないはずだ。もともと人の考えつくことではない。蘇我入鹿が考えただけだ。久作は天皇なみのミササギをつくろうというのだ。三人の子供のためではなくて、自分のだ。ついでに子供の魂も入れるつもりではあるが、魂だから場所はいらない。それから先祖の魂も呼びこむつもりだ。断乎決定的な墓を残して地上から他の一切の跡をたつつもりであった。
古墳の小さいのは近在にもあるが、彼はよそで大きいのを見物したこともあって、石室を組み立て、その上に円形もしくは円を二ツ並べたような山をつむ必要がある。入口なぞどっちでもよいと思ってやった仕事だったが、偶然にも南面して作法に合っていたそうな。畑のヒマをみて、この仕事にかかったが、近所の山から石を運ぶたって大仕事だ。一人仕事だから入鹿なみの巨石
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