下げ]
ロミオ
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思ひ出しなさるまで、斯うして此処に立つてゐやう。
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ヂュリエット
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さうしてゐて欲しいから、わたしや尚と忘れませう。一しよにゐたいといふことばかりは忘れずに。
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ロミオ
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予《わし》は又いつまでも斯うして此処に立つてゐよう。卿《そもじ》にも忘れさせ、自分も此処の事の外は皆忘れて。
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ヂュリエット
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もう夜が明くる。往《い》んで欲しいと思へども、小鳥の脚に、気儘娘が、囚人の鎖のやうに糸を附けて、ちよと放しては引戻し、又飛ばしては引戻すがやうに、お前を往なしたうもあるが、惜しうもある。
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ロミオ
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卿《そもじ》の小鳥になりたいなア!
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ヂュリエット
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お前を小鳥にしたいなア! したが、余り可愛がつて、つい殺してはならぬゆゑもうこれで、さよなら! さよなら! あゝ、別れといふものは悲し懐しいものぢや。夜が明くるまで、斯うしてさよならを言
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