下げ]
ヂュリエット
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Hist! ロミオ! Hist!……
……おゝ、こちの雄鷹をば呼び返す鷹匠の声が欲しいなア、囚人《とらわれ》の身ゆゑ声が嗄れて、高々と能《よ》う呼ばぬ。さもなかつたら、木魂姫が臥《ね》てゐる其の洞穴が裂くる程に、また、あの姫の空《うつろ》な声が予《わし》の声よりも嗄るゝ程に、ロミオ/\と呼ばうものを。
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ロミオ
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や、俺の名を呼ぶは恋人ぢや。あゝ、恋人の夜の声言《こわね》は、白銀の鈴のやうにやさしうて、聞けば聞くほどなつかしい!
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ヂュリエット
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ローミオ!
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ロミオ
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恋人か?
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ヂュリエット
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明日、何時頃に使ひを送《あ》げうぞ!
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ロミオ
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九時に。
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ヂュリエット
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あい、ちがへはせぬ。ああ、その時までが二十年! あれ、忘れた。何でお前を呼返したのやら?
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