ない。約一万円信二の手もとに集った。
 バンドと歌手の日当合計七千円、往復旅費が四千余円で、この費用だけでも足がでる。広告費、その他諸雑費、賄えるはずがないが、元々払う気持のない信二だから落附き払っている。
「どうも成績不良ですね。収入が一万円か。支出、バンド日当旅費一万一千百三十円也。学校借用費、広告その他印刷代、茶菓代、人件費等合計二万三千二百五十五円。合計支出三万四千三百八十五円ですね。とても支払いに足りません。ま、仕方がありませんね。農村不況は深刻ですから」
 会を牛耳ってるのは信二である。五助なぞは十枚ぶんの金を差しだしてペコペコ頭をタタミにすりつけているから、ヤツ子は呆れを通りこして、感服したのである。芋の図太さにも程があろう。山賊だってこれほどヌケヌケしているとは思われない。一同金を差しだしたあげくにタタミに頭をすりつけて平あやまりにあやまったり感謝したりして帰って行ったから、ヤツ子には何が何だか分らない。ただもう変テコな農村で山賊よりも薄気味のわるい集団を見た妖しさに打たれたのである。
「アナタは何なの? 村の大ボスらしいわね」
「外見はそうかも知れませんが、実は使い走
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