現れたものだ。
然し、実験者は天才ではない。又、生涯をその道に殉じようといふその道の鬼でもないのである。実験に失敗するとそれまでゞ、元のモクアミ、実験の疲れだけ余計なシミを残したやうなものだ。
実験から実験へ、更により良き結果をもとめて、その生涯を実験室で終るやうなガルソンヌはめつたにゐない。所詮一度でやめてしまふ実験なのだから、大事なことは、その唯一の実験の課題の程度が高いこと、せめてそれが問題だが、マリマリ嬢の実験課題はタイタイ先生の粗雑なノートからでゝきてゐるので、タイタイ先生もせつないところだ。
二人は先づスキ焼をくひ、ビフテキをくひ、次にサシミと天ぷらをくつた。
「先生、エロサービスの酒場へ行きませうよ。凄いお店の名前、三軒きいて暗記してゐるのよ」
「お待ちなさい。エロサービスは大先生の好むところだけれども、エロサービスにも色々とある。天分あるもの、技術の修練高きもの、天分ありながら未熟なるもの、ボンクラなるもの、その他、無数の差別段階があるなかで、大先生のお気に召すエロサービスはめつたにない。大先生ほどの進歩的な時代感覚の所有者になると、大先生はもはや物によろこぶとい
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