、ヒダのタクミに関係した目的も含まれていたが、それですらも彼らの隠れた名作に接することがあろうなどゝは夢想もせずに出発したのです。
★
ヒダのタクミが奴隷として正式に徴用をうけはじめたのは、奈良朝時代から皇室の記録にでてきます。しかし彼らが帝都の建設に働いたのは、もっと古い時からだ。けれども、それは記録にはでてきません。しかし彼らの本当の活躍は現存する記録時代の以前にあったと思われますが、その時代には彼らは徴用工ではなかったのでしょう。なぜなら大和飛鳥へ進出してそこの王様を追いだして中原を定めたのはヒダの王様でありました。それが大国主《おおくにぬし》にも当るし、神武天皇にも当るし、崇神天皇にも当るし、ひょッとすると、欽明天皇にも当るのではないでしょうか。天照大神に当る方もこの一族でしょうが、その女の首長は神功皇后にも当り、推古女帝と持統女帝とを合せて過去の人物の行動に分ち与えた分身的神話でもあるらしくて、つまりその首長または女帝は同族の嫡流を亡して天下を定めた。それが今日の皇室の第一祖のようです。その時代は今から千三百年ぐらい昔です。天武持統両夫妻帝か、その前
前へ
次へ
全32ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング