飛騨の顔
坂口安吾

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)鞍作《くらつくり》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)皇妃の死の翌日[#「皇妃の死の翌日」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ポチャ/\
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 日本で、もう一度ノンビリ滞在してあの村この町を歩いてみたいと思う土地は、まず飛騨である。五月ぐらいの気候のよいときが望ましいが、お祭のシーズンもよいかも知れぬ。京都はギオンの夏祭りをのぞいて多くの主要な祭が春の二ヶ月間ぐらいに行われるから祭のシーズンというものがあるが、ヒダはそうでもないらしいから、まとめてお祭を見るわけにはいかないようだ。
 お祭りという隠居じみたことをなぜ持ちだしたかというと、お祭りには御開帳というものがあって、ふだんは見せてくれないものを見せる。ふだん見せてくれないものがヒダには多いのである。そして、そのなかには他の土地の秘仏とケタの違う作品がある筈だと私は見当をつけているからだ。
 大昔からヒダの大工をヒダのタクミという。大工でもあるし、仏師、仏像を造る人でも
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