がだんだん暗くなり
鳥がネグラへ帰るとき
オレがお前のところへ帰る

夜の空に星あれば
星が食べたくなるよ
ねむりたやねむりたや
[#ここで字下げ終わり]

 警部は考えこんだ。
「オレの魂のハートのクインかね。シャレた文句だが、まさかその魂がトランプではあるまいな。しかし、とにかく、これは一ツの発見だ。たしか仁吉が来ていたようだが、ちょッと連れてきてくれないか」
 しかし、さっきまで見かけた仁吉の姿は、もうなかった。
「まさか仁吉が魂のハートのクインをさらッて行ったのじゃあるまいが、とにかく、妙な暗合だ」
 むしろ警部はひょッとすると毛里がトランプを盗んだのではないかと思った。そのトランプと人見を結びつけたのは彼の手柄だ。しかしそれが充分に報われないために、イヤガラセをしたのではないかと疑った。
 ともかく唯一の物的証拠ともいうべき重要物件の紛失だから、放ッてはおけない。仁吉の後も追った。そして仁吉を発見した。ところが仁吉のフトコロからハートのクインがポロッと地へ落ちたのである。

          ★

 以下は警部と仁吉の問答である。
「なぜ盗んだのか」
「これはオレのだ」

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