と関係のあった男であるが、一夜の浮気ということで終りをつげて、しかもその一夜は今後に於ても望む時に時々ありうるということで、結局その方が気楽だという常連もあれば、このネエチャンは金がなくてはダメなんだと自然に諦めてしまった者もあり、それらのやや冷静な男たちから見ると、グズ弁と右平の冷静を欠いた対立は、どちらかが一方を殺さなければおさまりそうもないところまで来ているように思われたのである。つまりこの二人がミヤ子を独占したいという気持はヨソ目にもそれだけ強烈なものが見えたのである。
やや冷静な常連の中には、どうもミヤ公の情夫は二人のほかにホンモノがいるんじゃないかな、と思いつく者もあった。
ミヤ公はこの店の女中にすぎない。店の主人は引揚者の夫婦で、この商売に経験もなく、また内心好感をもたないどころか嫌悪の念さえいだいていながら、暮しのために仕方なしにやってるような様子があった。主人夫婦はまったくお客に背を向けて、店のことはミヤ子にまかせッぱなしのような様子でもあった。
ミヤ子は店に寝泊りして、自分の部屋へ平気でお客を泊めた。しかし、午《ひる》すぎにどこへか外出してくることが多く、それ
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