とであり、それが彼らを内部や外部から実際に推し動かす動力であった。
 グズ弁は自分の身にさしせまっている危険から身を守るために真剣に闘いはじめた。
 そのころ、自動車強盗の被害が極度に多くなったので、グズ弁の会社の運転手たちは身を守るために教師をたのんで講習をうけた。教師は十手の達人で、運転手たちはスパナーを手にとって戦う稽古をはじめたのである。グズ弁は真ッ先にこの講習に参加した。
「あんたはトラックだから大丈夫だよ」
 と人々に云われたが、
「イヤ、トラックだって、今にどうなるか分りゃしない。ハイヤーが用心深くなると、今度はトラックが狙われる番だ」
 グズ弁の稽古は誰よりも真剣そのものであった。
 しかし、グズ弁はミヤ子との結婚の初志をすてなかった。むしろ益々真剣であった。そして、襲いかかる右平を逆に叩きふせ、次に中井の攻撃をも撃退して、ミヤ子を独占する最後の男となるために、スパナー戦法の稽古にはげんでいたのであった。
 ある晩、グズ弁がその一夜のミヤ子の恋人であった。
 屋根裏の寝室でグズ弁の着替えの世話をしていたミヤ子は、オーバー裏側のカクシの中からスパナーを見つけた。
 ミヤ子
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