てたゞ戦争をたのしんでゐる。信玄には天下といふ目当てがあつた。彼は田舎戦争などやりたくないが、謙信といふ長脇差は思ひつめた戦争遊びに全身打ちこみ、執念深く、おまけに無性に戦争が巧い。どうにも軽くあしらふといふわけには行かず、信玄も天下を横に睨みながら手を放すといふわけに参らず大汗だくで弱つたものだ。勤王だの大義名分は謙信の趣味で、戦争といふ本膳の酒の肴のやうなもの。直江山城はその一番の高弟で、先生よりも理知的な近代化された都会的感覚をもつてゐた。それだけに戦争をたのしむ度合ひは一さう高くなつてゐる。真田幸村といふ田舎小僧があつたが、彼は又、直江山城の高弟であつた。少年期から青年期へかけ上杉家へ人質にとられ、山城の思想を存分に仕込まれて育つた。いづれも正義を酒の肴の骨の髄まで戦争狂、当時最も純潔な戦争デカダン派であつたのである。彼等には私慾はない。強ひて言へば、すこしばかり家康が嫌ひなだけで、その家康の横ッ面をひつぱたくのを満身の快とするだけだつた。
 直江山城は会津バンダイ山湖水を渡る吹雪の下に、如水は九州中津の南国の青空の下に、二人の戦争狂はそれ/″\田舎の逞しい空気を吸ひあげて野性
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