満々天下の動乱を待ち構へてゐたが、当の動乱の本人の三成と家康は、当の本人である為に、岡目八目の戦争狂どもの達見ほど、彼等自らの前途の星のめぐり合はせを的確に見定め嗅ぎ当てる手筋を失つてゐた。特に三成は四面見渡す敵にかこまれ、日夜の苦悶懊悩、そして、彼の思考も行動も日々夜々ただ混乱を極めてゐた。
秀吉が死ぬ。遺骸は即日阿弥陀峯へ密葬して喪の発表は当分見合せとかたく言ひ渡した三成、特に浅野長政とはかつて家康に魚をとゞけて何食はぬ顔。その翌日、家康何も知らず登城の行列をねつてくると、道に待受けたのは三成の家老島左近、実は登城に及び申さぬ、太閤はすでにおかくれ、三成より特に内々の指図でござつた、と打開ける、前田利家にも同様打開けた。家康は三成の好意を喜び、とつて帰すと、その翌日はすでに息子秀忠は京都を出発走るが如く江戸に向ふ、父子東西に分れて天下の異変にそなへる家康例の神速の巻、浅野長政は家康の縁者で、喪を告げぬとは不埒な奴と家康の怒りを買ふ、だまされたか三成めと長政は怒つたが、長政をだしぬくなどの量見は三成にはない。彼はたゞ必死であつた。自信もなければ、見透しも計画もなく、無策の中から一日
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