生捕り豊後平定。だが、あはれや、その同じ日の九月十五日、関ヶ原に於て、戦争はたゞ一日に片付いてゐた。百日間、如水は叫んだが、心中二百日千日を欲し祈り期してゐた。たゞの一日とは! 如水の落胆。然し、何食はぬ顔。家康の懐刀《ふところがたな》藤堂高虎に書簡を送り、九州の三成党を独力攻め亡してみせるから、攻め亡したぶんは自分の領地にさせてくれ、倅は家康に附し上国に働いてゐるから、倅は倅で別の働き、九州は俺の働きだから恩賞は別々によろしく取りなしをたのむ、といふ文面。
かくて如水は筑前に攻めこみ、久留米、柳川を降参させる、別勢は日向《ひゅうが》、豊前《ぶぜん》に、更に薩摩に九州一円平定したのが十一月十八日。
悪夢三十年の余憤、悪夢くづれて尚さめやらず、一生のみれんをこめて藤堂高虎に恩賞のぞみの書面を送らざるを得なかつた如水、日は流れ、立ちかへる五十の分別、彼は元々策と野心然し頭ぬけて分別の男であつた。悪夢つひにくづる。春夢終れりと見た如水、茫々五十年、たゞ一瞬ひるがへる虚しき最後の焔。一生の遺恨をこめた二ヶ月の戦野も夢はめぐる枯野のごとく、今はたゞ冷かに見る如水であつた。
独力九州の三成党
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