戦、そこまで言ひたい如水であるが、言ひきる勇気がさすがにない。彼の当にしてゐるのは彼自らの力ではなく、たゞ天下のドサクサで、家康三成の乱闘が百日あればと如水は言つたが、千日あればその時は、といふ儚い一場の夢。然し如水はその悪夢に骨の髄まで憑かれ、あゝ三十年見果てぬ夢、見あきぬ夢、たゞ他愛もなく亢奮してゐる。
領内へふれて十五六から隠居の者に至るまで、浪人もとより、町人百姓職人この一戦に手柄を立て名を立て家を興さん者は集れ、手柄に応じ恩賞望み次第とあり、如水自ら庭前へでゝ集る者に金銀を与へ、一人一人にニコポンをやる、一同二回三回行列して金銀の二重三重とり、如水はわざと知らないふりをしてゐる。
九月九日に準備とゝのひ出陣、井上九郎衛門、母里太兵衛が諫めて、家康がまだ江戸を動いた知らせもないのに出陣はいかゞ、上方に両軍開戦の知らせを待つて九州の三成党を平定するのが穏当でござらうと言つたが、なに三成の陰謀は隠れもないこと、早いに限る、とそこは如水さすがに神速、戦争は巧者であつた。
翌れば十日|豊後《ぶんご》に進入、総勢九千余の小勢ながら如水全能を傾け渾身の情熱又鬼策、十五日には大友義統を
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