らかに叫ぶ。天下分け目の合戦できたり、急ぎ出陣用意。身をひるがへして帰城する、即刻諸老臣の総出仕を命じたが、如水まさに二十の血気、胸はふくらみ、情火はめぐり、落付きもなければ辛抱もない。
並居る老臣に封書を披露し、説き起し説き去る天下の形勢、説き終つて大声一番、者共、いざ出陣の用意、と怒鳴つたといふ、血気横溢、呆気にとられたのは老臣どもで、皆々黙して一語を答へる者もない。やゝあつて井上九郎衛門がすゝみでゝ、君侯のお言葉は壮快ですが、さきに領内の精鋭は長政公に附し挙げて遠く東国に出陣せられてをります。中津に残る小勢では籠城が勢一杯で、と言ふと、如水はカラカラと笑つて、貴様も久しく俺に仕へながら俺の力がまだ分らぬか。上方の風雲をよそに連日の茶の湯、囲碁、連歌の会、俺は毎日遊んでゐたがさ、この日この時の策はかねて上方を立つ日から胸に刻んである。家康と三成が百日戦ふ間に、九州は一なめ、中国を平げて播磨でとまる。播磨は俺のふるさとで、こゝまでは俺の領分さ、と吹きまくる大|法螺《ぼら》、蓋し如水三十年間抑へに抑へた胸のうち、その播磨で、切りしたがへた九州中国の総兵力を指揮して家康と天下分け目の決
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