に先立ちすでに関ヶ原の運命は定まつたもので、如水は直ちに家人神吉清兵衛を関東へ走らせて金吾秀秋の内通を報告させた。如水黒幕の暗躍により関ヶ原の大事はほゞ決したのだが、これは後日の話。
 さて三成は佐和山へ引退する。大乱これより起るべし。如水は忽ちかく観じて、長政に全軍をさづけ、大事起らばためらうことなく家康に附して存分の働きを怠るなと言ひ含め、お膳立はできたと九州中津へ引上げる。けれども秘密の早船を仕立て、大坂、備後《びんご》鞆《とも》、周防《すおう》上《かみ》の関《せき》の三ヶ所に備へを設け、京坂の風雲は三日の後に如水の耳にとゞく仕組み。用意はできた。かくて彼は中津に於て、碁を打ち、茶をたて、歌をよみ、悠々大乱起るの日を待つてゐる。

       三

 そのとき如水は城下の商人伊予屋弥右衛門の家へ遊びにでかけ御馳走になつてゐた。そこへ大坂留守居栗山四郎右衛門からの密使野間源兵衛が駈けつけて封書を手渡す。三成、行長、恵瓊の三名主謀して毛利浮田島津らを語らひ家康討伐の準備とゝのへる趣き、上方の人心ために恟々《きょうきょう》たり、とある。如水は一読、面色にはかに凜然、左右をかへりみて高
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