を切りしたがへた如水隠居の意外きはまる大活躍は、人々に驚異と賞讃をまき起してゐた。たゞそれを冷かに眺める人は、家康と、そして本人の如水であつた。家康は長政に厚く恩賞を与へたが、如水には一文の沙汰もない。高虎がいさゝか見かねて、如水の偉功抜群、隠居とは申せなにがしの沙汰があつてはと上申すると、家康クスリと笑つて、なに、あの策師がかへ、九州の働きとな、ふッふッふ、誰のための働きだといふのだへ、と呟いたゞけであつた。
 けれども家康にソツはない。彼は幾夜も考へる。如水に就て、気根よく考へた。使者を遥々《はるばる》つかはして如水を敬々《うやうや》しく大坂に迎へ、膝もと近く引き寄せて九州の働きを逐一きく、あの時は又この時はと家康のきゝ上手、如水も我を忘れて熱演、はてさて、その戦功は前代未聞でござるのと家康は嘆声をもらすのであつた。思へば当今の天下統一万民和楽もひとへにあなたの武略のたまものです。なにがさて遠国のことゝて御礼の沙汰もおくれて申訳もない、さつそく朝廷に申上げて位をすゝめ、又、上方に領地も差上げねばなりますまい。今後は特別天下の政治に御指南をたのみます、と、言ひも言つたり憎らしいほどの
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