た方が早道ですね。そう云えば、この邸内にはドーベルマンとシェパードの凄いのがいますよ。あの犬が庭に放されている限り、その男は半殺しの目にあいますぜ。そんな物音はききませんでしたか」
ところがピストルが火を吐いて地上に落ちてからというもの、近所の犬がそろってウォーウォー吠えだした。吠えられてみると、四隣遠近犬だらけ。特に一ツの犬の声に注意のできない状態であった。
「まだ八時だから、たのんで邸内を調べさせてもらいましょう。陳という中華人の家ですから、ちょッとうるさいかも知れませんがね」
表門へまわって案内を乞う。門番の小屋があって、中年の日本人の下婢が顔をだした。奥の本邸とレンラクの後、案外カンタンに庭内の捜査を許してくれたが、なるほど入口には物凄いドーベルマンとシェパードがいて、一足はいると跳びかかる構えで睨んでいる。
「その犬をつないでくれませんか」
「ええ、いま、つなぎますよ」
「ずッと放しておいたんですか」
「ええ、そう。日が暮れると、毎晩放しておくんですよ」
「すると、奴さん、やられてるな」
ところが、庭をくまなく捜したけれども、男の姿はどこにも見えない。犬と格闘した跡もな
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