、約四ヵ月前から合計五度にわたって同じような荷物が香港から届いているのが分った。
しかし、波川巡査はまだなんとなく解せないことがあった。
「自分が思わず立ち止ったとき、奈々子の叫んだ言葉というのは、こうなんです。小包……そんなもの知らないわよ……脅迫するのね。――ざッとこんな意味でしたよ」
「つまり犯人が南京虫の到着を知って取りに来たから、そんな小包はまだ来ていないとゴマカしたのだろう。それがそもそも奈々子の殺された原因さ」
云われてみれば、ピタリとツジツマが合うようだ。けれども、波川の頭には、なぜだか証明できないが、どこかにマチガイがあるような感じがついて離れなかった。するとそのカンもまんざら捨てたものではないことをなかば証拠立てるような事が現れた。
犯人を見たのは波川父子だけであるが、二人の印象を土台にモンタージュ写真を作った。インテリ風の眼鏡男は波川巡査一人しか見ていないから信用できかねるが、遊び人風の若者の方は二人の印象を合せていくうちに、二人そろってこの顔に甚だ似ていると断言したほどの似顔絵ができあがった。
半年ほど前まで奈々子の旦那だったという勝又という実業家にこの
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