道鏡
坂口安吾

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)此《かく》の如き

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)皇太子も亦|薨《こう》じ、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「日+方」、第3水準1−85−13]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)敵に向つてフラ/\うごいた。
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 日本史に女性時代ともいふべき一時期があつた。この物語は、その特別な時代の性格から説きだすことが必要である。
 女性時代といへば読者は主に平安朝を想像されるに相違ない。紫式部、清少納言、和泉式部などがその絢爛たる才気によつて一世を風靡したあの時期だ。
 けれども、これは特に女性時代といふものではない。なぜなら、彼女等の叡智や才気も、要するに男に愛せられるためのものであり、男に対して女の、本来差異のある感覚や叡智がその本来の姿に於て発揮せられたといふだけのことだ。
 つまり愛慾の世界に於て、女性的心情が歪められるところなく
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