と、一服の男三名、及び、暁葉子、上野光子、計五名の関係者を、署の柔道場に見張りをつけて休息させた。
まもなく、一人の警官が居古井のところへ来て、
「東京の新聞記者が、うるさくて困るんですがな。オレたちを、監禁するとは何事だ。出せ、と怒鳴りましてね。暴れるわ、騒ぐわ、手に負えまへんわ」
「アッ。そうか。あれも道場へ押しこめたのかい。あれは、いいのだ。出してやってくれ。それから、ここへ連れてきてくれよ」
木介はカンシャク玉をハレツさせ、金口はニヤニヤしながら、案内されてやってきた。
「ふてえぞ。京都の警察は」
「まア、まア。カンベンしてくれ」
「よせやい。我等こと、捜査のヒントを与えてやろうと天壌《てんじょう》無窮の慈善的精神によってフツカヨイだというのに、こういう俗界へ降臨してやったんだぞ。アン、コラ」
「すまん、すまん。フツカヨイの薬をベンショウするから、キゲンをなおしてくれよ。ちょうどお午だ。ベントウをたべてってくれ」
居古井警部は、サントリーウイスキーをとりだして、二人にさした。
「収賄罪にならんかネ」
木介はキゲンをなおして乾杯した。
「ねえ、居古井さん。我等こと、多少の
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