屋を訪ねた。スカウトというのは、有望選手を見つけだしたり、買収して引ッこぬいたりする役目で、ここに人材がいないとチーム強化ができない。煙山は日本|名題《なだい》の名スカウトであった。
細巻は煙山の部屋へとびこんで、
「オイ、ちょッとした話があるんだが」
「なんだい」
「実はこれこれだ」
と、テンマツを語ってきかせる。
「フーム。ちょッとした話どころじゃないじゃないか。大鹿は灰村カントクの子飼いだから、動かないものだと、各球団で諦めていた男だ。しかし、三百万円は高いな。そんな高額は各球団に前例がないと思うが、しかし、三百万の値打はある。あいつが加入すれば、優勝疑いなしだよ。さっそく社長に話してみようじゃないか」
敷島社長の部屋を訪れて相談したが、三百万という値はなんとしても高額すぎる。去年のトレードは五十万から八十万が最高と云われ、今年はベストテンの上位選手で百万、一人ぐらいは、百五十万、二百万選手ができるかも知れないと噂されている。球団が十五に増したから、選手争奪が激しく、高値をよんでいるのである。
「いくら三振王だってたかが新人《ルーキー》じゃないか。百万も高すぎるぜ」
太ッ
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