結婚するか、しないかが」
「大鹿はどこに住んでる」
「私もそれが知りたいのよ」
「フン。隠すな。痛い目をみたいか」
「隠すもんですか。私も探しているのだもの。あんた、探せたら、探してよ」
「よし、探してみせる。ついてこい」
「どっちよ」
「だいたい見当がついてるんだ。大鹿が、嵐山の終点で下車するという噂があるんだ」
「あそこから、又、清滝行の電車だってあるじゃないの」
「なんでも、いゝや。意地で探してみせるから。オレが大鹿と膝ヅメ談判して、奴が手をひくと云ったら、お光はオレと結婚するな」
「さア、どうだか。大鹿さんと結婚しないったって、あんたと結婚するとは限らないわよ」
「そうは云わせぬ」
「じゃア、どう言わすの」
「とにかく、大鹿の隠れ家を突きとめてみせるから、ついてこい」
一服は、光子をムリヤリひっぱるようにして歩きだした。光子も大きいとは云え、六尺ゆたかの一服のバカ力にかかっては、仕方がない。
しかし奇策縦横の自信は胸に満々たる光子、イザという時の用意には充分に確信があるから、このデクノボーのバカの一念で大鹿の隠れ家が分ったら、モッケの幸い、と内々ホクソ笑んで、ひっぱられてい
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