たのである。
コレアの手記によれば、農民は米、大麦、小麦で一般租税を払ひ、更に Nono と Canga のいづれかを収めなければならなかつた。そのうへ、煙草一株につき冥加《みょうが》として葉の極上の部分を選んで半分とられ、又、それらの物品が揃はぬときは、茄子一本につき何個といふ割当の賦課か、或ひは、何物かの年貢を納めねばならなかつた。(パジェスの鮮血遺書では、物品の代りに女をとられたと言ひ、これが島原の乱の直接の原因となつたと述べてゐる)
ノノ及びカンガとは何物か。パジェスによれば、ノノは九分の一税、カンガはポルトガル語で牛の軛《くびき》を意味するが、然し、多分日本語の何かではあるまいか、と言つてゐる。日本語であるとすれば、ノノは恐らく「布」であらうが、カンガとは? 布に相応するカンガとして、これをカイコ(島原地方ではカイゴといふ)であらうといふ説が妥当のやうである。カイゴは繭の意である。
現に、島原地方は養蚕の甚だ盛大な土地で、温泉岳の山麓は見はるかす桑の葉の波であつた。然し、そのやうな事実に就て手掛りをもとめるとすれば、他面、この地方は牛の甚だ多い所で、現在、牛を飼はぬとい
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