が、若い人たちの生活に自律性が現れ自我の責任に於て万事を行うようになれば、こういう現象が起るのは当然で、道楽親父の道徳派がダンスは国を亡すなどゝは大間違い、人間の生活の向上は、こんなところから、こんな風に現れてくるものなのである。
私は若い人たちが好きだ、若い人たちはみんな正義を愛し真理を愛し自我の向上を心がけているものだからだ。若者はいつの時代もそういうものだ。
けれども年と共に正義感は衰え、向上心は失われ、世間ずれのした不平家や、悟りすました大人になってしまう。
だから又若い人々は自己の胸に宿る正義感や真理愛や向上心を過信してはいけない。それは若さというものに自然に宿ったいわば本能的なものにすぎないからで、決して努力によるものではない。処女が本能的にその純潔を守ろうとすることゝ同じことで、そこまでは本能にすぎないのである。
私自身の一生をふりかえって判断して、青春時代はひどく暗いものであり、重たいものである。つまり生命力とか希望に溢れるということは、同じ程度の絶望や失意や未来の恐怖に溢れていることでもあって、如何に生くべきか、それを思いめぐらして、楽天的でありうるものではな
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