又、あらゆる女は闇の女の素質をもっているのである。まことの知識というものは、先ず内省から始まるもので、そこから、如何に生くべきかという問題がはじまる。日本には内省から始まる知識というものが殆どなく、命令と服従、禁止と許可、鋳型の中で育てられて疑ることも知らず、自分で考えるということを知らないばかりでなく、それがむしろ悪徳とせられていた。
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男女の交際とても、人生万事元は一つで、まず己れを知る生活から始まらなければならない。そして、如何に生くべきか、という事の一つとして行われるべきもので、その根本の確立だけが何より大事なものである。
私は先日パンパンガール諸嬢と会見座談会をやったが、彼女らは勝手に家をとびだしてきた我まゝ娘ばかりで、明るく、快活だった。戦前の娼婦は陰鬱でやたらわが身の悲劇を嘆くことを快とする風であったが、それに比べればパンパンの明るさと快活は娼婦の型としては一つの進歩で、私はむしろ喜ぶべきことだと思った。
親に売られて身売りして悲劇だなどゝ、そんな悲劇があるものか。喜劇である。茶番じゃないか。こんな貧しい茶番はなくなって欲しい。親の横ッ面
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