探偵の巻
坂口安吾
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)却々《なかなか》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)心根|却々《なかなか》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)(一)[#「(一)」は縦中横]
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(一)[#「(一)」は縦中横]
去年、京都の伏見稲荷前の安食堂の二階に陣どつて「吹雪物語」を書いてゐたころ、十二月のことだつた。食堂の娘が行方不明になつた。
娘は女学校の四年生だつたが、専ら定評ある不良少女で、尤も僕はその心根|却々《なかなか》見どころのある娘だと思つてゐたから、娘の方も信用してゐた。
そのころ京都には二人の友人があつた。一人は某大学の先生山本君。一人はその春学校を卒業して京宝撮影所の脚本部員となつて下洛した三宅君といふ威勢の好い若武者。大変恐縮な申分だが、当時小生専ら「吹雪物語」を考へつづけて暮してゐたから、老若二友が頻《しきり》と酒女へ誘惑するにも拘らず、毅然として――も大袈裟だが、時にそのやうなことがあつたのだから、見上げたものだと思ひなさい。
老若二友、僕を誘惑し
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