って、隣りの人に食ってかかった。
「あいつは超特別の大天才投手だよ。凄いウナリじゃないか」
「スポンジボールだからね」
「なアに別所だって、あんなもんだよ。カーブだって目にもとまらない速さじゃないか」
「どうかしてるな。このオジサンは。オジサンはあの学校の先生かい?」
近所にいた子供がきいた。その連れの子供が云った。
「あのピッチャーのオヤジだろう。あんまり変テコなこと云いすぎらア」
すると、みんなが笑ったのである。しかし、まさかアベコベのオヤジとは誰も気がつかない。金サンはいささか蒼ざめた。バッタ/\と三回まで長助チームは全員三振であった。長助はしきりに打たれて三回までに五点とられた。
「よく打ちやがるなア。あのピッチャーだってうまいんだがなア。あの左腕からくりだす豪球――」
「豪球じゃないや。ヘロ/\じゃないか」
「バカ。相手のピッチャーが豪球すぎるから、そう見えるのだ」
「ウソだい。あんなヘナチョコピー、珍らしいよ、なア。クジ運がよかったから準々決勝まで残れたんだい。別の組だったら一回戦で負けてらア。ほら、ごらんよ。石田が降りて、第二投手がでてきたよ。第二投手でもあのヘナチョ
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