選挙殺人事件
坂口安吾
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)仰有《おっしゃ》る
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)手を放さ[#「放さ」に傍点]ないで
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ポチャ/\
−−
三高木工所の戸口には、
「選挙中休業」のハリガミがでている。候補者の主人はそれですむであろうが、従業員は困るだろう。近所の噂をきいてみると、
「従業員たって、小僧のようなのも合わせて七八人の事ですよ。みんな選挙運動に掛りきりですから、商売は休業でも多忙をきわめているのですよ」という話であった。三高吉太郎という人物は、終戦後この土地へ現れて冷蔵庫を造って当てた。今では職人も使って木製の家具類を造り、このへんではモウケ頭の方だ。しかし、この立候補でモトのモクアミになるんじゃないかと近所の取沙汰であった。
代議士に当選すれば金になるかも知れないが、立候補だけでは金になる筈がない。店の宣伝という手もあるが、冷蔵庫やタンス製造という商売にはキキメがないだろう。
「つまり政治狂というヤツだな」
誰
次へ
全29ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング