子はそれをどう読むだらう? 複雑な思ひはあるにしても、喜びを感じることは当然だつた。
然し草吉の心は暗かつた。生命とりとめる見込といふ、執拗な自殺常習者に果せられた残酷な皮肉も、呪ひの如きものを満した草吉の心にとつては、当太郎の身に起つた事情ではなく、彼自らのことのやうに思はれてゐた。こんな風にしていつまで生きつづけてしまふのだらう、こんな風にして! 汽車の進むにつれて、草吉の苦汁のやうな悒鬱は深まるばかりであつた。
底本:「坂口安吾全集 01」筑摩書房
1999(平成11)年5月20日初版第1刷発行
底本の親本:「作品 第六巻第四号」
1935(昭和10)年4月1日発行
初出:「作品 第六巻第四号」
1935(昭和10)年4月1日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:伊藤時也
2010年5月19日作成
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